薬膳を学び始め&実践し始めて5年目のキョウです。
今回はこれから薬膳を学ぶ方、初心者さんのために、そもそも「薬膳師って何なの?」というところを考えてみたいと思います。ここでいう「薬膳師」は資格名ではなく、薬膳を実践する人をさしています。
Contents
薬膳師をわかりやすく例えると
夫に「『薬膳師』ってさあ〜」と話をしていると「え?薬剤師?」と聞き返されました。薬剤師ちゃいます、薬膳師!でも確かに薬膳師っていまいちイメージが湧きにくいんですよね。これから薬膳を学ぶ人なら、なおさらだと思います。
薬膳師を定義すると、こちら。
- ◆薬膳師とは
- 中医学の考え方を基に、養生や健康のためのレシピや料理を提供する人
- 中医学は東洋医学のひとつで、中国医薬学または中国伝統医学のこと。
もっとわかりやすく「薬膳師」を例えてみると…
- 管理栄養士・栄養士の中医学バージョン
ちょっと乱暴な言い方ですが、これだとイメージが湧きやすいのではと思います。(栄養士さん、違ったらすみません)
栄養士は現代栄養学を基に、栄養バランスのよい食事やメニューを考え、食生活のアドバイスなどを行う職業。
対して薬膳師は、中医学を基にした食事やメニューを考え、元気でいられるためのアドバイスなどを主に行います。
ちなみに、薬膳師はよく食医=食のお医者さんにも例えられますよね。そうなんです。薬膳には「日々のご飯が薬になる。だからご飯を作る人がお医者さん」という考え方があります。(医療行為ができるわけではありません)
違いはベースになっている学問
ここでポイントになるのが、「栄養学(西洋医学)」と「薬膳学(中医学)」。栄養士と薬膳師、ベースになっているものの考え方が大きく違います。
- ✔️栄養学
- 西洋医学を基にした考え方。糖質やタンパク質、ビタミンといった栄養素を中心とします。必要な栄養素を過不足なく満たし、健康に生きるための学問。歴史は100年程度。
- ✔️薬膳学
- 中医学および古代中国の自然哲学をベースにした考え方。食材や生薬の力を活かして、中医学の目的である「健康と長寿」、病気の予防や治療を目指す学問。中医薬膳学の歴史は2000年程度。
例えば、貧血の人がいるとします。
栄養学(西洋医学)の場合、血液中の赤血球中のヘモグロビン数値が低く不調を引き起こせば貧血と考え、サプリメントを飲んだり、鉄分の多い食事を取って補うのが一般的だと思います。
一方、中医学はまず「なぜその人が貧血になっているのか?」を考えます。
(そもそも中医学で貧血は「血虚」の一部と考えます)
もともとの体質虚弱、飲食の偏り、ストレス、慢性の病気、過労、出産育児授乳経験などなど、要因は何なのか?血虚でもどんな血虚のタイプなのか?そしてそれに合った食事を考え、根本から治そうとする。これが中医学の特徴であり、薬膳の特徴でもあります。
中医学が根本治療だといわれるのは「不調の本質を見るから」なんですね。
薬膳の考え方と薬膳師
薬膳ってこんな考え方
- 【整体観念】 →人間は自然の一部、季節や環境に合った食生活が大切!
- 【未病医学】→自覚症状が出ないうちに対処、予防に力を入れる!
- 【弁証施膳】→体質に合わせたオーダーメイド食、陰陽バランスを保つ!
- 【食薬同源】→食材は薬にもなる、味や性質を利用して体を養う!
栄養学と薬膳学の違いは「ものさしの違い」だとよく例えられています。どちらが良い悪いではなく、それぞれにいいところがあります。
近年では西洋医と中医の融合が行われ、両方のよい面を取り入れる動きが活発になっています。
いろいろと書きましたが、結論。
個人的な考えですが、私は「薬膳師」をこんな風に考えています。
- 薬膳師とは
- ・イメージは管理栄養士・栄養士の中医学バージョン
- ・栄養学よりも根本的なところから食のアプローチをする
- ・薬膳では日々の食事が薬になると考えるので、食の医者でもある
- ・中医学を基に、体内バランスの偏りを整え、健康と長寿を目指す食のサポーター
- 薬膳は「食のひとつの考え方」です。
- 食でその人のバランスの崩れを正し、予防や根本改善を重視し、その実践をお手伝いすることが薬膳師の役割だと考えます。
薬膳はハマれば分かりやすく楽しい
最後に付け加えると、薬膳師のフィールドはさまざまです。
薬膳サロン主催、薬膳講師、飲食店はもちろん、美容師、メーカー開発、看護師、介護関連などなど、多岐にわたります。そのフィールドが縛られず、自分なりの活かし方ができるのも薬膳師の魅力のひとつです。そのフィールドについては、また別の記事で書けたらと思います。
薬膳を活かしてさまざまな活動をする方たちへのインタビューはこちら????
薬膳は「よくわからない、難しい」と思われがちですが、それは現代日本の私たちが、中国の自然哲学の考え方にあまりなじみがないから。けれど薬膳はハマってしまえば逆にわかりやすいと感じる部分もたくさんあります。足を踏み入れれば、とても面白い世界が待っていますよ。