まだまだ秋の雰囲気ですが、暦の上では冬ですね。冬は寒さがつらいだけでなく「老けやすい季節」でもあるんです。そこで今日は中医学の考え方に基づいた対策をまとめようと思います。
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中医学からみた冬の特徴
寒さが厳しくなり、一年で最も過ごしにくい冬。冬眠する動物がいるように、人間も体を休める季節です。古典では「閉蔵」、つまり自然と同じようにじっとして、たくわえることが大切。無理をしてはいけないとされます。
冬は寒邪の影響大
冬の特徴は寒さと乾燥。「寒邪」は私たちにさまざまな影響をもたらします。
- 悪寒、悪風、震えなど
- 頭痛、胸痛、腹痛、肩こり、腰痛など
- 四肢の屈伸不利、せきやぜんそく、けいれん
寒さによって風邪をひきやすくなる、気血の流れが悪くなることで痛みが増す、筋肉が縮こまることで高血圧や心脳血管疾患などの発病率が高くなるなどの影響があります。
冷えは美容にも影響
- 生理痛、不妊、流産
- 肌の乾燥、ツヤがない
- しもやけ、ひび
血流が悪くなることを血瘀(けつお)といいますが、血瘀は肌の乾燥、くすみ、シミ、生理痛などの原因になります。寒さによる血瘀は胸痹(きょうひ・西洋医学でいうところの心筋梗塞)などの原因にもなるので、気をつけたいところです。
気候による冷えのほか、自律神経の乱れ、血液循環の悪化、女性ホルモンの乱れなども冷えにつながります。特に女性は筋肉量が少ないため男性に比べ冷えやすいのもの。やせすぎも冷えを招くので、冬の無理なダイエットは控えましょう。
冬は腎に通じる
中医学では、それぞれの季節に通じる五臓があります。
冬は五臓の「腎」に通じます。腎は、生命エネルギーをためておくところ。春に備えて五臓六腑から運んできた栄養素をためこむため、冬に活発になります。
西洋医学でいうところの「腎臓」の機能だけでなく、中医学でいう「腎」はホルモンや泌尿器系、成長・発育・生殖などに関わるとされます。
腎は、生命力の根本となるいわば「体の根っこ」の部分。冷えや寒さにとても弱いという特徴があります。腎の機能が落ちると白髪、脱毛、生殖器の衰え、難聴、物忘れなどにつながります。こういった理由で「冬は老けやすい」のです。 秦の時代に書かれた黄帝内経にも「冬に活動すると腎気が傷む。すると翌春に足がしびれ腰が曲がる病気になる」と書かれています。冬は無理せず生命エネルギーである「精気」をたくわえて、ムダな老けをストップしましょう。
冬の養生法
ここからは食や生活面での冬の養生法をまとめていきます。
食べて養生
あたたかいものを食べよう
冬の養生の基本は「あたたかいものを食べる」ことです。冬に限らず、養生では「温飲温食」といい、体温よりあたたかいものを食べた方がよいとされます。
冷たいものを食べても、便となって出てくる時はあたたかいですよね。冷たいものを食べるということは「消化する作業にあたためる作業も加える」ということ。さらに油ものや食べ過ぎなどを加えるともっと負担に。年末年始、胃腸をどんどん働かせてブラック企業状態にならないよう気をつけましょう。冬の鍋はあたたかく消化もよいのでおすすめです。
生理中のアイスは控えよう
暖房の効いた部屋でアイスクリームや冷たいビール…おいしいのですが、養生的にはNG。胃腸を冷やすのでおなかを壊しやすいほか、栄養の吸収が悪くなり、疲れやすくもなってしまいます。
特に生理中に冷たいものをとると生理痛がひどくなることが。中医学では「不通則痛=流れが悪くなると痛む」といわれ、血の流れが悪くなることで痛みを招いてしまいます。
/#劉伶先生の漢方レッスン
参加しました!
\「日本人は冷える生活習慣に慣れてしまってる」
中国の大学ではお弁当を温める
専用のスチームがあり
夏でも必ず温めて食べるし、あたたかい服装をして
特に足元は絶対に冷やさないそう。冬の冷たい飲食、
肌を出す薄着…
気をつけたいものです♨️— キョウ 黒川京子 薬膳ライター (@natugoyomi) November 1, 2020
先日、中医学セミナーに参加したのですが、中医師の先生が興味深いお話をされていました。
中国出身の劉伶先生は日本に来て20年以上たつのに、いまだに冷たいお弁当が食べられないそうです。日本の冷たいお弁当を食べると、すぐにおなかを壊してしまうのだとか。
中国ではお弁当は夏でも必ずあたためて食べるので、毎朝専用のスチーム室へ持って行き、お弁当の時間になると取りに行くのだとおっしゃっていました。「日本人は冷えに慣れすぎている」という言葉も印象的でした。養生に対する習慣が根付いている中国のように、私たちも気をつけたいものです。
あたためる性質の食材をとろう
中医学では食材には五性があるとされます。冬は体をあたためる性質を持つ食材を取り入れていきましょう。
ねぎ、しょうが、大葉、香菜、みょうが、三つ葉、にら、ピーマン、唐辛子、黒砂糖、山椒、鮭、あじ、ます、シナモン、クローブなど
あじとパプリカのカレー風味
以前調理実習で作った「あじとパプリカのカレー風味」。体をあたためるあじ、パプリカ、カレー粉などを使っています。
黒糖しょうが茶
冬の風邪のひき始めにぴったり。すりおろししょうがと黒糖をお湯で少し煮るだけで完成です。
腎陽を補う食材をとろう
体をあたためる食材の中には、体のボイラー機能である「腎陽」を強化するものがあります。こちらもおすすめ。
くるみ、羊肉、鶏肉、えび、なまこ、杜仲など
中国の東北部や北海道では羊肉をよく食べますが、羊肉には体をあたためる作用があるので理にかなっているんですよね。ちなみに、暑い沖縄のゴーヤチャンプルーは体の熱を取り、潤いをもたらす組みわせ。すばらしい食の知恵です。
羊肉の串焼き
中国東北部では羊肉がポピュラー。東京神田のお店「味坊」でいただいた串焼き。
羊肉とピーマン炒め
羊肉とピーマンを炒めるだけのカンタン薬膳。クミンがよく合います。
黒い食材をとろう
冬は黒いものを食べるとよいといわれます。黒いものには腎に作用するものが多いことが理由です。
黒米、黒豆、黒ごま、黒きくらげ、昆布、のり、わかめ、うなぎなど
補腎つくだ煮
黒きくらげ、のり、こんぶなど「黒いもの」をつくだ煮にしてみました。しょうゆと砂糖で煮るだけでカンタン。しかもごはんにかけて毎日食べられます。
古くなったのりや、お鍋のだしに使った昆布などをリメイクできるのでおすすめ。食材をムダにせず、アンチエイジングもできる一石二鳥のつくだ煮です。
生活習慣で養生
冬はよく眠る方がいい
養生というと早寝早起きのイメージがありますが、実は冬はゆっくり寝てOK 。冬は日の入りが早く、日の出が遅いですよね。中医学では季節の動きに合わせて生活する「天人合一」という考え方があるので、人間もそれに合わせて早く寝てゆっくり起きればよいとされています。といっても昼まで寝ていればいいというわけではなく、太陽が昇ってから起きるという意味。睡眠時間を長めにとって、陽気をたくわえましょう。
日本人は冷えに慣れすぎ
中医学の先生が「日本人は薄着が多い。足は出さない方がいい」とおっしゃっていました。特にあたためたいのは「3首とおなか」。首・手首・足首の3首は太い動脈が通っている上、肌が薄く、血液が冷やされやすい場所。3首を衣服でカバーすればあたたかい血液がめぐるので、全身のあたたかさにつながります。
また、首の後ろには「風門」というツボがあります。字のごとく「風が入る場所=風邪が入る場所」なので、しっかりカバーしたい部分。手首や足首にも重要なツボがあるので、中医学的に見ても3首は重要です。
おなかはいうまでもなく、臓器がある大切な部分ですね。薄着の重ね着で空気の層を作ってあたたかさをキープしましょう。
適度な運動で冷え防止
リモートワークなどで運動不足になりがちな最近ですが、筋肉量が少ないと熱が生み出せず冷えにつながりやすくなります。冬は汗をかくような運動は不向きですが、筋トレやヨガ、ストレッチなど適度な運動で、自家発電できる「燃え体質」を目指したいですね。
まとめ
冬の養生のまとめはこちら。
冬の養生のポイント
- あたたかいものを食べる
- あたためる性質の食材を食べる
- 黒いものを食べる
- よく眠る
- あたたかい服装をする
- 適度な運動をする
冷えによる老けは、自分で気をつければ防げる部分。上手に養生を取り入れて、ムダに老けない冬を過ごしましょう!
ビールを減らして
睡眠時間を
確保します!