韓方茶セラピスト リョウコさん
上級漢方スタイリスト、国際薬膳師、医薬品登録販売者、韓方茶セラピスト。韓国に伝わる「韓方」に興味を持ち、ライフスタイルや季節に合わせて手軽に楽しむ薬膳や、韓方の普及のための発信、薬膳茶プロデュースなどを行う。
薬膳の知識を生かして活動や仕事をする人にインタビューする「薬膳と生きる人」シリーズ。今回は、まだまだ日本では知られていない韓国伝統医学「韓方」についての発信をしている、リョウコさんにお話をうかがいました。
Contents
韓国ドラマから広がった韓国への興味
◆韓国に興味を持ち始めたきっかけは何ですか?
もうずいぶん前ですが、友達の影響で韓国ドラマを見るようになったことです。ちなみに「チャングムの誓い」だったのですが、その時は王様の食と健康を守る「スラッカン」の存在を知って面白いなと思いました。
またラジオのハングル講座を聴き始めました。たまたま聴いた回が「ウェルビーイング」の内容だったんですよ。韓国って公園にスポーツ器具があるし、運動する機会が多いという話だったんですけど、健康に対しての意識が高いのが意外だったんです。
◆その頃に韓方(ハンバン)に関するコミュニティに入ったんですね。
はい。韓国に興味を持った頃、たまたま5色の食材を使った料理セミナーがあったので、参加しました。そこで「陰陽五行」の考えを初めて知ったんです。その時のセミナーの主催者がコミュニティの会員で、その影響でイベントに参加するようになりました。
◆何か心惹かれるものがあったんでしょうか。
コミュニティの第一回総会が韓国の仁川(インチョン)で開催されたので、参加しました。その後も、江華島(カンファド)というところでよもぎキャンドル作りを体験したり、智異山(ちりさん)や、東医宝鑑村など、現地で伝統医学や薬草にまつわるイベントに参加しているうちに、すっかりハマってしまいました。
今はコミュニティでできた仲間と定期的に情報交換するほか、イベントやツアーも企画したいと準備中です。日韓架け橋交流会さんのお手伝いをすることもあります。
- 日韓架け橋交流会
- https://www.jbridgek.com/
漢方、中医学との出会い
◆そんな中で、中医学を学ぶようになったのはなぜですか?
本当は韓方(韓国医学)を勉強したかったんですが、韓方を教えてくれるところがなくて。まだまだ日本では韓方を学べる場所が少ないんです。それでまずは漢方を学びました。薬日本堂で上級漢方スタイリストの資格を取って、その後は薬膳の調理実習もしたいなと思い、本草薬膳学院に入学しました。日本で薬膳は割と浸透してきているけど、韓方となるとまたちょっと違うんです。でもなかなか学べるところがないんですよね。とはいえ韓方の大元は中医学ですし、韓方を理解するのにとても役立っています。
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◆漢方や中医学を学んで、どうでした?
私はメンタルがクヨクヨしやすくて漢方薬を飲んでいたんですけど、薬膳の先輩に「それって病気じゃなくて、脾胃が弱ってるだけだよ、ちゃんと食べてる?」と言われたんです。
きちんと食べず、寝られないから次の日も疲れが取れない、だからクヨクヨ悩む。基本的なことができなかった。「ちゃんと食べてないから気虚血虚で営養が足りず、メンタルが落ちるんだな」と、自分を俯瞰して見られるようになったのは東洋医学を勉強したから。
仕事で遅くなって楽しようと簡単なものばかり食べていたら調子が悪いし、メンタルも落ちるな…と反省して。心と体がつながっていることを実感して、まずは体を労って生活を見直そうと思いました。体調管理の仕方も変わったし、メンタルも立て直すことができるようになりましたね。
◆中医学の資格を活かして、転職もされましたね。
国際薬膳師の資格を取った後、漢方薬局に転職しました。そこで薬膳茶の開発に携わることができ、とてもいい経験になりました。自己紹介などで「国際薬膳師の資格を取って漢方薬局に転職して、薬膳茶を作っています」と言うと、「そんなことできるんですか?」と驚かれるんですよ。薬膳の資格といえば、料理教室や食事相談に役立てるイメージしかないようで…。薬膳師の資格は武器になるので、皆さんもっと前面に出してほしいですね。
韓方の普及のために新たな一歩
◆漢方薬局を経て、今後は韓方を広める活動をされるとか。改めて韓方の魅力を聞かせてください。
韓国では若い子でも韓方を知っています。コンビニでも紅参のドリンクが売っていて手軽に買えるし、そういうのが面白いなあと思って。韓国はもともと土地が貧しくて、中国のように薬を作れなかったんですね。有名な韓医師のホ・ジュン先生は「身の回りに薬になるものがいっぱいあるから、それを使って自分たちの体調を整えなさい」と言っているんです。病気になってから病院に行って薬を飲むよりも、身近にあるもので体調を整えられるならコスパがいいじゃん!と。「生活に身近にあるもので体を整える」という韓方の考え方に共感して、日本の生活に置き換えられないかなとずっと考えています。
- ホ・ジュン(許浚)
- 李氏朝鮮時代の医者で、東医宝鑑の著者として知られる。
◆身近にあるものが薬になるという考えですか。
そうです。朝鮮人参やなつめも普通の食材扱いだし、スターバックスの夏のメニューに五味子のドリンクなどもあります。防風や桔梗の根や、芍薬の根や五味子など、日本では医薬品扱いになるものを韓国では普通に食べます。春には、山菜ナムルを食べると病気にならないからと、たくさん食べるんです。日本でも春の山菜はデトックス感覚で食べますよね。そういう昔ながらの知識や情報は韓国ではまだまだ身近に残っているし、それをもっと日本に広められたらいいなと思っています。
◆私も旅行に行った時、薬膳食材が普通の市場で売っているのを見て驚きました。
市場で食材も手に入りやすいし、普通に日常に取り入れられる雰囲気がありますよね。あと、韓国では鍼灸が保険対応なんですよ。日本は基本、自由診療ですけど。そういうのもあって、韓方がは生活に身近だなと感じています。日本にも元々あるはずだから、もっと掘り起こしたいなという気持ちです。
韓方茶を広め、韓方を学べる場所を作りたい
◆まずはどんな活動をする予定ですか?
以前から愛飲している理道(イド)茶の販売のお手伝いをしようと思っています。理道茶というのは、韓国のハスの葉やさんざし、桔梗などの薬用植物を使ったお茶で、醗酵させているのが特徴です。漢方茶や薬膳茶に比べて飲みやすく続けやすいので、セルフケアにぴったりなんですよ。
お茶に使われている原料は、植物園や全国の有機農法の生産者さんによって作られています。
◆なぜお茶なんでしょうか?
お茶だったら、お料理が苦手でも取り入れやすいですし、家族が薬膳を嫌がる人でも自分のために取り入れられますよね。お茶は毎日飲むものだし、それを韓方茶に置き換えれば身近なセルフケアになる。お茶をダシとして、サムゲタンやスープに使えば、さらにおいしく養生に取り入れてもらえますし。韓方を身近に感じてもらう入り口になればという気持ちです。
◆さらにその先の目標はありますか?
韓方の世界をもっともっと広めたいです。お茶を通して韓方の世界を気に入ってもらえたら、修学旅行じゃないですけど、韓国で韓方を学ぶ旅なども主催してみたいです。例えば、みんなで韓国の薬草園や韓医院を訪れたり、薬令市場に行ってみたり。大学の先生たちを日本に呼んでセミナーもしたいし、ワークショップもやってみたい。いろいろやりたいことがあります。
韓国好きの人の美容や旅行、韓国スターなどのコミュニティはたくさんあるけれど、韓方を学び体験する機会は少ないんですよね。だから、日本で韓方のことを突き詰められる場所やプラットフォームを作りたい。
「生活に身近にあるもので体調を整える」というホ・ジュン先生の言葉に共感して、実践する人、学ぶ人を増やす活動していきたいです。
ありがとうございました。
漢方薬局勤務から、韓方普及への道を歩み出したリョウコさん。なじみのない人も多い韓方ですが、とても身近で手軽に楽しめることがわかりました。中医学や薬膳とともにこれから日本にも定着していくのではと感じました。
- 方剤:四物湯、桂枝湯(お茶のようにして飲みます)
- 薬膳メニュー:なつめとさつまいもの蜂蜜煮(補気と潤い)、青梗菜といかのベニバナ炒め(血を補い活血)
- 食材:なつめ、山芋、当帰の葉
- 国際薬膳師 リョウコさん
- 公式インスタグラム: https://www.instagram.com/tyorinko/
- リンク: https://www.instagram.com/hanagoto.jp/