「夜の10時から2時はシンデレラタイム。この時間に寝ると美容にいい」というような話を聞いたことはありませんか?実はこれと同じように、中医学では昔から「この時間に~するとよい」と説いた考え方があるのです。それが今日ご紹介する「子午流注(しごるちゅう)」です。
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子午流注って何?
「子午流注(しごるちゅう)」は、いわば中医学の「養生時計」。人間の1日の体内リズムと自然のリズムは関係しているとする養生法です。今から約2000年以上前の秦の時代に書かれた中医学のバイブル「黄帝内経(こうていだいけい)」に記載されています。
体内時計遺伝子の発見にノーベル生理学・医学賞が授与されたり、体内時計と栄養の関係「時間栄養学」が注目されたりと、今でこそ日周リズムが科学的に証明されていますが、「子午流注」は、はるか2000年前にその関わりを発見していたのです。
子午流注と経絡の関係
科学が発展していない昔に、どうやって体内リズムのことがわかったのでしょうか?実は、子午流注の考え方のもとになっているのは「経絡(けいらく)」です。
経絡(けいらく)とは
人体の気血の通り道であり、臓腑や器官をつなぐ道。経絡の上にあるのが経穴、つまり「ツボ」です。よく経絡は線路、経絡上のツボは駅に例えられます。経絡やツボは目に見えず、人の体を解剖しても何かあるわけではありません。しかし中医学で経絡は、病気の予防や治療にとても重要とされています。
昔の人は、経験的に「この時間になるとこの経絡が盛んになる」と知っていたのでしょう。子午流注は1日24時間を12に分け、各時間に盛んになる経絡と臓器が当てはめられています。例えば「肺の時間(午前3~5時)」であれば、肺につながる経絡が盛んになり、肺に気血がよく流れ活発になるということです。では、各時間の解説をしていきたいと思います。
子午流注をくわしく解説
肺の時間(3~5時)
新鮮な空気を吸い込もう!
呼吸と深く関わる「肺」の時間。呼吸することで新鮮な血が全身をめぐります。夏ならもう明るいので、この時間に起きて朝日を浴びると◎。冬は無理せずに。肺が盛んになるため、肺が弱い人はこの時間にせき込んだり、タバコを吸う人は痰がからまって目が覚めたりすることもあります。
大腸の時間(5~7時)
お通じでデトックス!
肺と表裏一体の「大腸」が活発に働く時間。夜の間に消化された食べ物が、便として出やすくなります。排便で体の毒素を排出しましょう。白湯を飲む、ウォーキングをするなどもおすすめ。
胃の時間(7~9時)
あたかい朝食を食べよう!
「胃」がよく働く時間。この時間に朝食を食べるとしっかり消化されます。あたたかい和食がおすすめ。
脾の時間(9~11時)
仕事や勉強に集中モード!
食べ物を消化吸収する「脾」が活発に動いて、体を動かす気血津液精を生成し、栄養分を全身に行き渡らせます。気血が養われるので、仕事や勉強に集中できる時間です。
心の時間(11~13時)
ホッとひといき昼の休憩!
「心」が血を全身に送り、血が充実するので精神的に安定します。正午をすぎると陽から陰の時間へ移行するので、15分程度の昼寝をすると午後も元気に活動できます。
小腸の時間(13~15時)
適度に水分補給!
「小腸」の働きが高まる時間。小腸は必要な栄養と水分を分別し、膀胱に運びます。適度に水分補給をすると流れがスムーズに。
膀胱の時間(15~17時)
仕事や勉強の効率アップ!
「膀胱」の働きが盛んになり、尿が作られます。排尿により余分な熱を排出するので、トイレは我慢せずに。膀胱~腎は脳とつながっているので集中でき、効率がアップします。
腎の時間(17~19時)
腎を養う夕食を!
生命エネルギーをたくわえる「腎」が活発に。この時間に食べると、食べたものから生命エネルギーが効率よく作られます。
心包の時間(19~21時)
入浴でリラックス!
心を包む「心包」は、心を守る役割をしています。リラックスすることは心包の働きをたすけます。就寝2時間前に入浴すると入眠しやすいといわれるので、できればこの時間に。
三焦の時間(21~23時)
のんびり眠る準備!
「三焦」は気と水の運行通路。ゆったりすごして流れをよくしましょう。寝る直前までスマホやテレビを見ていると交感神経がたかぶってスッと眠れません。読書やスキンケアなど心が落ち着くことがおすすめです。
胆の時間(23~1時)
日付が変わる前に就寝!
正常な新陳代謝を担う「胆」の時間。また22時~1時はもっとも陰の気が盛んになる時間なので、体のためにもこの時間に寝ていることが大切。
肝の時間(1~3時)
熟睡モード!
さて、最後は「肝」の時間です。この時間は、美容面でとっても重要。美容にとって大切なことといえば「血がたっぷりあること」ですが、その血をたくわえるのが「肝」です。
この時間に熟睡していれば、肝は栄養豊富な血をたっぷりたくわえることができます。しかし起きていれば血を使うので、たくわえることができません。
血が余っていればこそ肌・髪・爪を美しく保てるので、美容のためにはこの時間に熟睡しておくことが大切。美容だけでなく、貧血気味、生理前、のぼせほてり乾燥が気になる人は血が足りていない状態なので、この時間には寝ているようにしましょう。
夕食が遅くなる人はどうしたらいい!?
子午流注によると、夕食に適しているのは17~19時。できればこの時間に食べるのが一番ですが、どうしても難しいという人もいるのではないでしょうか。
実際、15歳以上の日本人の約12%が、夜9時以降に夕食を摂取しています。さらに20~40代の男性になるとその割合は30~35%、20 代女性で25%と高くなります。
現代の時間栄養学の研究によると、夜遅い時間に食事やスイーツをとると血糖値が著しく上昇し、肥満や糖尿病のリスクが高まるということがわかっています。
対策としておすすめなのが、「分割夕食」です。
分割夕食
- 18~19時にサンドイッチやおにぎりなど炭水化物を食べる
- 帰宅してから野菜とたんぱく質のおかずを食べる
このように夕食を2回に分けて食べることで、昼食から夕食までの空腹時間を短くし、血糖値の急上昇を防いで、生活習慣病や肥満のリスクを下げることができます。「いつ食べるか」はとても大切です。仕事などで夕食が遅くなる人はぜひ参考にしてください。
朝ごはんを食べると太りにくい
子午流注では胃の時間(7~9時)にあたたかい朝食を食べるのが良いといわれていますが、帰宅時間が遅く夕食も遅いと、食欲がわかず、朝食を欠食しがちになってしまいます。
朝食は体内リズムをととのえるのに重要。多くの研究で、朝食の欠食は肥満、糖尿病につながることが報告されています。食べる内容として「おにぎりだけ」「パンだけ」では十分に体温を上げる効果がないため、たんぱく質と炭水化物を組み合わせるのがポイント。ごはんにみそ汁と納豆、パンならスープと卵などが理想です。
参考文献:臨床栄養(2020,3) 医歯薬出版株式会社
鍼灸の治療は子午流注が大切!?
子午流注の話に戻ります。子午流注は経絡と関係しているので、鍼灸の治療でよく使われます。先生によっては、患者さんがどの部分で悩んでいるか聞き、その症状に合わせて診療時間を予約することもあるそう。(夜中の場合は施術が難しいので、同じ効果が得られる12時間後にするのだとか…)
また、中医学の先生に聞いたのですが、韓国ドラマのホジュン(韓医師の話)では、高貴な人の治療をするように命令されるも「その時間にしても効果がない」と断り、症状に適した時間に治療して治すというシーンがあるそうです。(見たことがないので聞き伝えですみません)
子午流注は養生の指導に使える
生活時間が多種多様になった現代では、子午流注の通りに過ごすことはなかなか難しいかもしれません。ぜひ改善できるところからトライを。また、食事指導や生活指導、薬膳の教室など、指導する立場の人なら、子午流注をひとつの養生の目安として伝えてみてはいかがでしょうか。
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